2020年も間もなく終わりを迎えます。今年はコロナに始まり、コロナに終わった一年でした。2020年は終わるもののコロナは変異種が出てくるなど収束にはまだ時間がかかりそうです。ニューノーマルが当然になり、働き方が大きく変わったこの一年。企業における人の教育も変えざるを得ない状況でした。先日日経ビジネスで「コロナ後の新人 職場の希望かお荷物か」という特集がされていたこともあり、今年多くの新人に出会った経験を基に私の見解を書いておこうと思います。2021年の新人教育の参考になれば幸いです。
1.これまでの教育ができなくなった・・・
2020年は新型ウィルスコロナの影響で一気に習慣や働き方が変わりました。テレワーク、マスクの着用、手洗い、消毒の常態化。仕事ではあらゆる場面で非対面化が求められ、入社式や社員研修、各種イベントが中止になった所も数多くありました。中でもダメージが大きかったのは新人教育でした。日本企業の多くが新卒の一括採用・研修期間後の配置・OJTを重視したスキル習得といった方法で新人を育成しています。その手段が使えなくなった為、新人教育を行わないまま一年を終える企業もあるようです。
私自身の一年をふりかえりますと、2月から雲行きが怪しくなったものの4月まではほとんどの仕事が予定通りでした。3月後半から中止の連絡が入りだしたので、オンライン研修ができるように準備を始め、5月にはオンラインで新人の方のフォローをさせていただきました。夏には万全の対策を取って集合型研修を再開した企業/オンライン教育にシフトした企業、と二つの流れができていたように感じました。秋には新人フォローアップ研修で例年以上にお声がけをいただきました。本当に多くの新人の方にお会いできたので、今年の新人の方についての私の見解をお伝えしようと考えた次第です。
2.今年の新人は職場の希望?それともお荷物?
さて、日経ビジネスの「コロナ後の新人 職場の希望かお荷物か?」です。
「研修、OJT…ほぼ省略 まともに育つか? 今年の新人」という問いかけが見出しにでていましたが、答えとしては「育つわけがない」です。育つとしたら、新人のもともとのポテンシャルが高いか職場に育てる風土があるということが理由でしょう。
長年新人教育に携わってきた経験から、ここ数年の新人は次のような傾向が続いていると言えます。
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意外に思われるかもしれませんが、概して「前向き」です。仕事を通じて成長したいと考えている人が多いのです。ところが、その気持ちの表現方法を知らない・持たないので、伝わらないことが往々にしてあります。仲間内・狭いコミュニティの中では通じ合うのですが、その外には伝わってきません。面白いのは「それでは伝わらないよ」と指摘すると、「あ、そうなんですね。じゃあどうしたら伝わりますか?」とすぐに修正できるところです。知らないことや気づきには実に素直なのです。その長所をうまく伸ばすには「タイミングよく指摘する(間を置かない)」「わかるように説明する」ことがポイントです。良さを引き出すスキルと引き出してやりたいという熱意を感じ取れば、それに応えてくれるのが今の新人です。スキルと熱意、2点セットであることが重要です。
協調性が高い、応用力が弱いというのは多くの方が感じていらっしゃるとおりです。一方でマニュアルや決まりごとを読んで理解するのは驚くほど速いです。
今年の新人の方についてもこの傾向は続いています。素材としては昨年や一昨年と変わらないのです。違うのは「企業の対応」です。社会人として大事なスタート時に誰も経験したことのない出来事に遭遇し、企業がどう対応したかなのです。ある企業は「コロナであろうと今この時期に教育しなくてどうするんだ」と考えて工夫の上で実施されました。ある企業は「気の毒だけど、コロナのせいで仕方がない」と放置。新人たちはその考え方を反映して育ちます。もともとが素直なのですから、当然です。前者の新人はその意を汲んで順調に育っています。後者、春に放置された新人は「社会人ってこんなもんか」と半年経っても学生から社会人への意識の切り替えができていません。最悪のケースは「コロナで明日どうなるかわからないんだから、頑張ったり考えることに意味がない」といった考え方を植え付けてしまうパターンです。コロナのせいで今まで通りのことができなくなったのは事実です。ですが、「コロナ≠教育しない・新人を放置」ではないのです。実際、工夫をしながら教育をしている企業はあるのですから。つまり、コロナで教育できないは言い訳で、コロナは企業の人材育成の考え方の違いや日ごろからの問題点を明確にしたのです。
ちなみに新人の長く続いたこの「傾向」が変わってくるのは2021年以降だと私は推測しています。
就職活動中にコロナを経験したことで、仕事・就職に対する考え方が変わっているはずです。更に2022年以降は一気に変わると予測しています。
それを予感させるニュース(コロナで一番変わったのは日本の学生)を見つけたので、リンクを貼っておきます。
「政治参加は若年化が進んでいる」
「日本が1位!コロナ禍で市民の国が変わった国調査」
リンク先に飛ぶのが面倒くさい方へ。リンク先のサマリーです。
Change.org(オンライン署名サイト)ではユーザーが多い上位25カ国において、2020年1月1日から7月31日までにChange.orgのサイト上で起こったユーザーの行動を昨年の同時期と比較して、新型コロナウイルスによって市民の意識がどのように変わったのかを「新型コロナウイルス パンデミックレポート」にまとめて発表。その発表では日本が一番行動を変えたとしています。 行動変化のバロメーターは、①同サイト上での「キャンペーン」と呼ばれる署名活動の増加率/②集まった賛同数/③ユーザーの増加率の3つの指標で測定。 日本は、 ・新規で立ち上がったキャンペーン数が219.67%増加、 |
2022年以降、論理的に正当な自己主張をする人が増えるかもしれません。となると、教育する立場の人間はこれまで以上に説明能力が必要になるでしょうし、そのためには「why」なぜその仕事・業務が存在するのか/なぜ今それをやるのかなどを組織の中で再確認しておくことが必須になる(働き方改革の本来の姿)でしょう。見かけだけの働き方改革は通用しなくなるでしょう。
3.2021年はどうなるのか?
おそらくもう1年は今の状態は続きそうです。では、どうしたらいいのでしょうか。
職種や業種、企業の状況によって、実施できることは異なってきますが、今年の事例も交えて実施のための考え方をあげておきます。参考になれば幸いです。
- 感染対策を徹底して集合型で研修を実施する
→密を避ける、感染対策を徹底する、短時間にするなどの工夫で実施した企業があります。次年度以降も条件付きでその方針で進めるというところも。条件と言うのは長距離の移動を伴わない、日常同じ職場にいるなどです。ここは企業ごとでよく考える必要があるでしょう。
またこれまでの新人研修が長時間だったからといって、長時間実施する必要はありません。自社にとって本当に必要なものに限定すれば、短時間でも実施可能になるはずです。 - 集合型の研修だけでなく、オンラインの導入も検討する
→オンライン会議のための体制が整っていないから無理だと考えて、検討しないというのはもったいない話です。
社員全員にPC貸与はコスト的に難しいが、ノートパッドなら可能ということでパッドを配布してオンライン研修やオンライン会議に切り替えた企業があります。また拠点をたくさんお持ちの企業は、新人に最寄りの拠点に出社させてそこからオンライン研修を受講する方法を採用されました。拠点がなくても今は低価格で借りられる会議室がたくさんあります。そのほとんどでオンライン会議に必要な設備が整っていますので、そこから会議に入ってもらうという方法も可能です。
オンライン研修に関して言うと、これまでの研修をそのままオンライン化するフェーズはとっくに終わってて、今はオンラインの特徴を活かした研修があたりまえになっています。
下記リンク先にて効果的なオンライン研修の導入の仕方などご紹介していますので、ご参照ください。
[web研修、上手に導入するには」
「オンライン研修と集合型研修、その違いは?」
【3分でわかる人材育成】新型コロナウィルスと人材育成(動画)
- 研修以外の方法も考える
→内容によっては通信講座や自己啓発などでカバーできます。探索する努力を怠らないこと。
人材育成には3つの柱があるといわれています。その柱について、下記リンク先で解説しています。
【動画 3分でわかる人材育成】令和の人材育成 - OJT頼みをやめる/OJTでの指導方法を工夫する
→OJTでなくても学べる方法を見つけます。指導内容を動画やテキストで学んだり、ロールプレイングを録画して指導する方法もあります。
ただし、どんな能力を習得させるかを明確にしておく必要があります。
新しい方法へのトライ・企業ごとにあった方法を見つけるには多少手間暇がかかるものです。正解がわからない中で工夫ができるか、とにかく考えましょう。やってはいけないこと、それは「思考停止状態になる」「コロナのせいにして何もしない」です。
結局は企業が人の育成をどう考えているかで対策が変わってくるのだと思います。
迷ったり悩んだときは、いつでも私どもにご相談ください。
相談をお受けするシステムを2つご用意しております。
まとめ
- 2020年の新人は企業の教育方針の影響を受けて、二極化している
- 2021年からコロナ禍を経験した新人の傾向に変化がではじめ、2022年から大きく変わると考えられる
- 有事でも教育を止めないことが重要!
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