問題解決能力の育て方

問題解決

問題解決思考の入門書といわれる「問題解決プロフェッショナル」の初版が発売されたのが1997年。その頃から社会人の基礎能力として問題解決能力が必須と言われるようになりました。この本がベストセラーになってから20年以上経過していますが、問題解決力を発揮できる人は増えているでしょうか?私の印象ではまだまだ・・・です。30代・40代・50代の方は必要性を痛感していらっしゃる方・自発的に学ぼうとしている方が多いけれど、20代だと一部の成長意欲の高い方が学んでいる程度。「問題解決能力を習得するように」と組織的に取り組まれている企業も増えていて、知識としては知ってはいるけれど、実践となると多くの企業で道半ばな状態だと感じています。

1.そもそも問題解決とは何をいうのか

■問題、そして問題解決とは

実は問題解決が何であるかを明確に説明できる人がとても少ないのが実状です。問題解決は下図のフレームワークに沿って考えることが大切です。

※問題解決に使える「フレームワーク」・思考を助ける「フレームワーク」は数多く存在します。ここでご説明するのは問題解決の基本中の基本です。この構造がわかっていなければ、どんなにカッコいいフレームワークを使っても意味はありません。

問題解決のフレームワーク

ありたい姿・現状・ギャップの3つが必要

この図に書かれている「ありたい姿」(ゴールと呼ぶこともあります)、「現状」の認識、そのありたい姿と現状との「ギャップ」の3要素が問題解決には欠かせません。
問題とはありたい姿と現状にギャップがあることを指し、問題解決とはそのギャップを解消してありたい姿を実現するためのプロセスなのです。

「ありたい姿(ゴール)」「現状」「ギャップ」の3点そろって、はじめて問題解決のスタートなのです。

■問題と課題の違いを説明できるか?

次に大事なのは、「問題」と「課題」の違いが明確になっているか、です。多くの方がこの違いがあいまいなまま、問題という言葉を使ってみたり課題という言葉を使ってみたり。ビジネスの場面で問題解決的に使う場合にはここをはっきり使い分ける必要があります。問題解決のための具体的な対策を「課題」といいます。先ほどのフレームワークに沿って説明すると、ありたい姿と現状のギャップを解消するための方法を「課題」といいます。問題が先にあって、それから課題です。この順番は重要です。

2.問題解決ができない・・・。なぜ?

下図は、問題解決力を発揮できない人のと発揮できる人との違いをまとめたものです。

問題解決ができる人とできない人

問題解決できない人の思考パターン

■過去の分析にとどまっている

問題解決の基本的な枠組みについては、みなさんそれは知っている・わかっているとおっしゃいます。では、この枠組みに沿って自分自身の・職場での問解決を考えましょう!と進めると、ある現象が起きます。多くの方は現状分析で終わってしまうのです。
ありたい姿からスタートするのではなく、現状分析からスタートしてしまうのです。
「〇〇ができていない」
「〇〇がうまくいかない」
「〇〇に達していない」など。
これを続けると、現状の不満や不具合を解消したものが積みあがるだけで、せっかく取り組んでも「今」の地点をうろうろして終わり。
なんだかなあ、とがんばった割に達成感は少なく、結果もパッとしない・・・。もちろん周囲の評価も・・・。
非常にもったいないです。

現状分析ができるということは、「何か」を基準にして分析しているはずなのです。
その「基準」を言語化できない・めんどくさくてしない人が多いのです。
(こうなってくると、今度はコミュニケーション能力、特に言語化能力の話になってきます。)

どこに進みたいのか?
何を実現したいのか?

が欠けていては、どこにも動けません。
ですので、「ありたい姿・ゴール」設定の重要性、そこから逆算することをしつこいくらいお伝えしています。
また、組織で仕事をするからには組織のゴール達成に貢献することに意味があります。ですから「自分が考える」ゴールだけではだめで、
「組織が目指す」ゴールと方向性が合っている必要があります。

■仮説検証・解決策の策定に時間をかけない

ほとんどの人は、仮説を立てないし、解決策を複数なんて考えません。なんとなく今見えている原因と解決策に飛びついて終わり。これでは新しい視点や行動なんて生まれるわけがないのです。仮説の立て方や重要性を知っていても、めんどくさいからしないのです。とにかくめんどくさがる人が多いのです。問題解決力を発揮している人は、解決策を複数用意します。問題への対策を1つだけ用意してもそれがだめなら終わりです。結果はゼロです。でも、複数用意しておけば、1つがだめでも次の手があります。2つ目がだめでもその次があります。3つの策で効果があれば、単純計算で3倍です。そんなことあたりまえじゃないかと思うかもしれませんが、仕事で確実に成果を出す人はここに時間をかけています。

■発散思考が苦手である

発散思考というのは、発想をどんどん広げていくものです。論理性や整合性にこだわらず、自由にアイデアを出します。具体的にはブレインストーミングやブレインライティング、属性列挙法などがあります。この「自由に」が実は曲者です。あなたは盛り上がったブレインストーミングに参加したことはありますか?そもそもブレインストーミングを経験したことはありますか?日本人はこの「自由に」に慣れていません。「さあ、どうぞ自由にお話ください」とふっても静まり返ることが多いのです。問題解決力の前に発散思考の練習が必要だと感じています。

<参考>ブレインストーミングの4つのルール

・批判しない/結論を出さない
・質より量を優先する
・アイデアレベルの意見を歓迎する
・模倣・乗っかりOK。

 

■孤軍奮闘して1人でなんとかしようとする

所詮人間1人でできることなんてしれています。周りの人に相談したり、アイデアをもらったり、ちょっと聞いてみる・話してみる、うまくいった事例に学ぶ、倣う、などいくらでも他者の力を借りることができるのに、しない人が多いのです。迷惑をかけないように。。。という配慮なのか、チームワークが苦手なのか、孤独が好きなのか・・・・。仕事で成果をあげるのなら、1人でなく必ず誰かの協力が必要です。

■思考レベルでダメ出しをする

発散思考と関連するのですが、アイデアを広げる前に「あ。これは自分の能力的にできない」「あれはお金がかかるから無理」とダメ出しをして終わり。その先は考えない。お金や能力、マンパワーが豊富だったら、それはさぞ幸せでしょう。でも、そうはいかないのが現実。そして、その現実の中で私達はなんとかしないといけない。お金と人に余裕がなくても「知恵」は出せること、小さな行動は起こせることに気づかないと何も始まりません。実はここでも「未来(ありたい姿)」が関係してきます。そのゴールに近づきたい!という気持ちが強ければ、アイデアが出てくるし出るような行動をとりやすいのです。もし、ゴールがいやいやだったり「まあ、できなくてもいいか」と思うようなものだと、簡単に自分でダメだと制限をかけてしまうことが多いようです。

考える

時には机を離れて考えよう

3.問題解決能力を育てるには

最近ではわかりやすく書かれた本も出ているし、実践しやすい内容のセミナーやワークショップもたくさん開催されています。ですが、大事なのはやっぱり失敗してもいいから実生活で「実践」して「継続」すること。これに勝るものはありません。いきなり大きなテーマに取り組む必要はありません。まず身近なところで確実にあなたのコントロールの利く範囲でスタートしてください。日常生活のことでもいいし、もちろん仕事でも。ダイエットでも残業を減らすでもテレワーク環境を整える、読書の時間を増やす・・・でもかまいません。できれば、何かに記録するといいでしょう。取り組む際の手順とポイントを次にあげておきます。

  • 取り組むテーマを決める
  • ゴール(ありたい姿)を決める
  • いつまでに何がどうなれば、ありたい姿に到達したといえるかを具体的に決める(「成果」をはっきりさせる)
  • 現在とゴールとの対比をあげて、その対比が起きている原因をできるだけたくさん出してみる
  • 原因から考えてゴールに到達するために何をすれば効果がありそうか、できるだけたくさんあげてみる
  • 無理なく取り組める・続けられるものを複数ピックアップする
  • いつ何をするかを決める
  • 実践する
  • 期間の途中でチェックする
  • うまくいっているものは継続、うまくいってないものはやめる/他の方法と入れ替える
  • 最終日にどれだけゴールに近づけたかをチェックする

「複数(できるだけたくさん)」「無理なく」がキーです。いつも私が推奨しているのは、5つ以上。どんな時も片手の指全部使うくらいの選択肢をつくること。これを癖にすると、ある時からアイデアの幅が広がっていることに気づきます。

 

まとめ

  • 「ありたい姿(ゴール)」「現状」「ギャップ」の3点そろって、はじめて問題解決が始まる
  • 問題解決ができない人には共通した傾向がある
  • 問題解決能力を育てるためのキーワードは「無理なく」「ゴールから」「やってみる」「続ける」「複数」の5つ!

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