新しい生活様式が働き方と能力を変える

考える力

政府の専門家会議が提示した「新しい生活様式」は、文字通り私達の生活様式を変えるでしょう。その中には「仕事」「働き方」についても言及されています。新しい生活様式に従うことで、当然ながら働き方も仕事で必要となる能力も変わりつつあります。ウィルスに対する効果的な方法が確立されるまでの暫定措置だと思ってはいけません。今回無事収束したとしても第二波がくるとの予測がありますし、似たような危機が訪れることも考えられます。そして、何よりも一旦変えたものを元に戻すのは困難なのです。私達は今、これまでの「働き方改革」とはレベルが違うインパクトの大きな変化の真っただ中にいるのです。では、「新しい生活様式」とは何か、この提言がどんな風に私たちの仕事やスキルに影響するのかを見ていきましょう。

1.新しい生活様式とは

「新しい生活様式」とは、2020年5月4日政府の専門家会議が提示した新型ウィルスコロナを想定したレジリ私達の生活の実践例です。4つのシチュエーション別に非常に細かく具体的に「何をすべきか」「何を避けるべきか」が示されています。47もあげられていて量が多いのですが、明らかに仕事・働き方に影響があるのであげておきます。仕事に影響があると考えられるものを赤字で表記し、各パートごとにどのように影響があるかをまとめておきます。
新しい生活様式(厚生労働省HP)クリックすると別サイトが開きます。

(1)一人一人の基本的感染対策

<感染防止の3つの基本>
①身体的距離の確保/②マスクの着用/③手洗い
<移動に関する感染対策>
  • 人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける
  • 遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ
  • 会話をする際は可能な限り真正面を避ける
  • 外出時、屋内にいるときや会話をするときは症状がなくてもマスクを着用
  • 家に帰ったらまず手や顔を洗う できるだけすぐに着替える、シャワーを浴びる
  • 手洗いは30秒程度かけて水と石けんで丁寧に洗う(手指消毒薬の使用も可)
    ※高齢者や持病のあるような重症化リスクの高い人と会う際には体調管理をより厳重にする
  • 感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える
  • 帰省や旅行はひかえめに 出張はやむを得ない場合に
  • 発症したときのため誰とどこで会ったかをメモにする
  • 地域の感染状況に注意する

 

【仕事への影響を考える】通勤時・出社時のマスク着用が標準になる。会社としてマスクの確保・備蓄は必要なのか?外出先から帰った時にシャワーは浴びられなくても、何かしらの対策はできるのか?誰がいつどこに行き誰と会うのかスケジュール管理はより厳密になり、住んでいる地域の情報収集も必要。オフィスのレイアウトも検討が必要。

 

(2)日常生活を営む上での基本的生活様式

 

  • まめに手洗い 手指消毒
  • せきエチケットの徹底
  • こまめに換気
  • 身体的距離の確保
  • 3密の回避(密集 密接 密閉)
  • 毎朝の体温測定 健康チェック 発熱またはかぜの症状がある場合は無理せず自宅で療養

 

【仕事への影響を考える】これから夏に向けて冷房がないと仕事に支障がでてくるが、換気はできるのか?建物の構造上、換気ができないとしたら、何か他に機器・ツールを導入することで対策は可能か? 検温を測定するためのツールは?(非接触型が望ましい)

 

(3)日常生活の各場面別の生活様式

 

<買い物> <公共交通機関の利用>
  • 通販も利用
  • 1人または少人数ですいた時間に
  • 電子決済の利用
  • 計画を立てて素早く済ます
  • サンプルなど展示品への接触は控えめに
  • レジに並ぶときは前後にスペース
  • 会話は控えめに
  • 混んでいる時間帯は避けて
  • 徒歩や自転車利用も併用する
<娯楽 スポーツ等> <食事>
  • 公園はすいた時間や場所を選ぶ
  • 筋トレやヨガは自宅で動画を活用
  • ジョギングは少人数で
  • すれ違うときは距離をとるマナー
  • 予約制を利用してゆったりと
  • 狭い部屋での長居は無用
  • 歌や応援は十分な距離かオンライン
  • 持ち帰りや出前 デリバリーも
  • 屋外空間で気持ちよく
  • 大皿は避けて料理は個々に
  • 対面ではなく横並びで座ろう
  • 料理に集中 おしゃべりは控えめに
  • お酌 グラスやお猪口の回し飲みは避けて
<冠婚葬祭などの親族行事>
  • 多人数での会食は避けて
  • 発熱やかぜの症状がある場合は参加しない

 

【仕事への影響を考える】 業務上必要な購買行動、電子決済や現金を使わない決済は可能か?また自社が提供しているモノ・サービスは電子決済システムでの支払いができるか?販売促進策としてサンプルを提供している場合、これまでどおりで大丈夫か?サンプルが難しい場合、代替策はあるか?社員は相変わらず満員電車での通勤をしていないか?時差出勤や自転車・徒歩での通勤を認めることはできないか?昼食はどんなところでとっているのか?接待や社員の懇親の場は重要(そもそも本当に必要なのかを考える必要がある)だが、これまでどおりのスタイルでなく新しい方法はないか?

(4)働き方の新しいスタイル

 

  • テレワークやローテーション勤務
  • 時差通勤でゆったりと
  • オフィスは広々と
  • 会議はオンライン
  • 名刺交換はオンライン
  • 対面での打ち合わせは換気とマスク

※業種ごとに「感染拡大予防ガイドライン」の作成は関係団体が別途作成。
学校におけるガイドライン(文科省)
オフィスにおけるガイドライン(経団連)
製造業におけるガイドライン(経団連)

【仕事への影響を考える】 テレワークの環境は整っているか?(社員のITリテラシーで環境にはばらつきがあるのが普通)どこまで環境整備を援助するのか?職種的にテレワークが困難な人の安全対策をどうするのか?オンライン会議のツール選定は終わっているか?オンラインで名刺交換のツール選定は終わっているか?対面での打ち合わせスペースの設置はできているか?
書く能力

書く能力はより一層求められる

2.「新しい生活様式」を取り入れたら、仕事はどう変わる?

ここまで「新しい生活様式」が仕事に与える影響を考えてみました。では、仕事がどのように変わるのか、より具体的に考えます。ある女性社員(架空の人物)の視点で書いてみます。

【メーカー勤めのJ美の1日】
J美はメーカー勤務。営業担当。今日は在宅勤務日なので7時半に起きて、ゆっくり朝食をとり簡単に身支度を整えた。J美の家からオフィスまでは電車を使って1時間強かかる。これまでだと6時半に起きなくてはいけなかったし、満員電車に乗って通勤していた。真夏は地獄のようだった。スーツを着てパンプスを履いていて、あの満員電車!今は出社日も時差出勤が奨励されているので、出勤も楽になった。以前に比べて、通勤については快適なことが多い。人間らしい生活ができているような気もする。始業時間の9時にPCを立ち上げて昨日誰とどこでどのくらい会って、どんな話をしたかをレポートにして上司に送った。午後からのオンライン会議に十分間に合うはずだ。そこからはメールのチェックと返信、ちょっとした事務作業をした。最近J美が所属している営業2課は交代で出社しているので、全員が顔を合わすことは少ない。オンライン会議も最近では慣れたが、スタート当初は何かと大変だった。まず課の最年長者は初日、ログインすらできなかった。2回目はなんとかログインできたが、カメラとマイクの使い方がわからず最後まで名前が表示されるだけだった。かくいうJ美も自宅では格安wifiを使っていたので会議中何度も回線が途切れて、会議の画面から突然消える羽目になった。その現象は何度も続き、最終的に会社が紹介してくれたプロバイダーに入ることで今はなんとかなっている。オンライン会議は想像していた以上に面白いと思う。特に定例の営業全体会議は少しワクワクする。これまでは役員待遇の営業本部長の「ありがたい」お話を皆で拝聴するだけの会議だったのだが、オンラインになったとたん営業本部長の口数が減ったのだ。代わりにこれまで営業としては地味な存在だった人が次々と的確な意見を出してくれる。J美自身はまだほとんど発言していないが、フラットな雰囲気が目新しくてとにかく面白いと思う。顧客への営業活動もオンラインが増えている。たいした用もないのに来ないでほしい、オンラインで済むものはオンラインにしてと言われている。そうなると、不思議なもので「どうすれば会ってくれるだろうか」と真剣に考えるようになった。一生懸命提案内容を考えるようになったのだ。本当の営業活動ってこういうことだったのではないか。これまでの営業活動は何だったんだ。社内の無駄な打ち合わせも減ったので、今は考える・良い資料をじっくり作る時間がある。パンプス履かなくても営業ができるってすごいなと思う。そういえば、少し太ったけど体調がいい。疲れたら無理せずに休憩できる。同僚や気の合う先輩たちとの雑談が減ったし、何かあったらすぐ聞けるという状況でないことは寂しいが、会えないわけではない。つまらない宴会も激減した。もうお酌しなくていい!他人の料理を取り分けたりオーダーの心配をしないでいい!!なんで女子だからって、そこまで気を遣わねばならなかったのだ!飲みたければ、友達と気の合った同僚とオンライン飲み会をすればいい。時々寂しいけれど、無理することが減った。快適なことの方が多いかもしれない。いや、待て。オンラインに慣れてきた人達がやたらとオンライン会議の予約を入れてくる。明日は6つ入っている。まじか。同期のA香は、上司が1日に何度もメールを入れてきて仕事の確認をするので困ると言っていたな・・・・。メールで提出する資料も増えた。たまに製品の仕様のことで生産部のH田さんに連絡を取るのだけど、最近H田さんがものすごく冷たい。生産ラインはテレワークなんかできないし、時差出勤もないからこれまでどおりだもんな。温度差のようなものがある。いいことづくめではないな、まあそれは何でもそうなんだけど・・・・。

私自身の経験や周りで起きている話を集約して、1人の女性の働き方にしてみました。すべて実話です。
「〇〇しなければならない」はたいてい辛い・嫌なことが多いものですが、この「新しい生活様式」は少し趣が異なっていて、快適さがあります。もちろんその一方で、人間関係が希薄になること・事業活動への取り組み方を大きく変える必要があるといった面もあります。

3.「新しい生活様式」でビジネススキルは変わるか?

J美のケースを読まれて、お気づきになったでしょうか?間違いなく求められるビジネススキルに変化が起きています。優先順位や必要とされる度合いが変わったという方がふさわしいかもしれません。

具体的には次のような能力・スキルがより一層重視されるでしょう。

  • ITリテラシー ITリテラシーとは、通信に必要な環境やITに関連する様々な要素を理解し、ツールを使う能力をいいます。ある程度の規模のある企業に勤めていると情報部門や総務部門といった他者が仕事に必要な環境を整備してくれます。しかし、いったん自宅で仕事となると、自宅での環境は自分で整える必要があります。仮に環境整備までは会社がバックアップしてくれたとしても、何かトラブルがあった時には自分で対処しなければならないこともあります。たとえ外部サポートを利用するとしても、状況説明をする必要がありますので、言葉の理解くらいはしておく必要があります。また、次々に新しいツールが出てきているので、それらのツールを使えないと話にならない場面もでてきます。J美のケースでは、営業本部長はオンライン会議のツールを使えないために発言できていないのだと考えられます。人材育成の観点からは、「自分である程度できるように」支援をする必要があります。「ある程度」のガイドラインを作る必要がありますし。水準に達していない人をどのように・どこまでサポートするのかを考えなければいけません。

 

  • 文章力 テレワークやオンラインでのやりとりは、文章量が増えます。必要なことを短時間でさっとまとめる、あるいはチャットでの素早いやりとりが求められます。自分の考えを言語化すること、これまでは「話す」「伝える」力が重視されていましたがそこに「文章」で伝える力が加わります。まず言語化できない人は、リアルでもオンラインでも発言できません。自分の意見を伝えることを練習する、タイピングに慣れる、日ごろから「言語化」を伸ばすにはどうしたらいいかを考えましょう。できれば若手の時から他者に自分の意見・考えを伝える機会を半強制的につくってください。習うより慣れよ、です。

 

  • 自律性 テレワークが増えると、時間をどのように使うか自分で決める必要があります。疲れたら適宜休憩できるのはテレワークのメリットですが、一方でメリハリのないだらだらした時間を過ごす人がでてくるのもテレワークです。自律性がある人・ない人で今後大きく仕事の成果が分かれてくるものと思われます。また、これまでは職場でわからないこと・疑問点は近くにいる上司・先輩に尋ね、相談ができましたが、テレワーク環境ではそうはいきません。相談はできるのですが、タイムラグが生じるのです。ですから、自分で考え、問題解決することもこれまで以上に必要となってきます。仕事のことももちろん自分自身の時間・感情に対しても自律的に対峙することになります。

 

この他に、「組織」の一員であることを意識する機会に乏しいので、どうやって帰属意識を高めるか、チームで仕事をする経験が激減するのでチームワークをどう高め維持するかといった点についても考慮が必要となるでしょう。
新しい時代が始まっています。
用意はいいですか?準備はできていますか?

まとめ

  • 「新しい生活様式」は確実に私たちの生活と仕事を変えつつある。後戻りはできない
  • 「新しい生活様式」にはメリットもあるし、デメリットもある
  • 求められるビジネススキルが変わった!!

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あなたのボスはあなた

誰かのリーダーになる前にあなたはあなたのリーダーである。

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