「アサーティブ」「アサーティブ・コミュニケーション」についてご存知でしょうか?
相手の立場を尊重しながら上手に自己主張をすることを言うのですが、謙遜を美徳としてきた私たち日本人には自己主張することに抵抗のある人も多いようです。
その一方で最近では自己主張することにためらいがない若年層も出てきています。
だからと言って自分の意見ばかり押し付けあうのも困りますね。
一方でアサーティブなコミュニケーションが増えればハラスメントを回避できるので、重要性についての理解は深まってきています。
これほどまでにアサーティブという考え方が必要とされることはなかったように思います。
今回はこのアサーティブなコミュニケーションについて解説いたします。
1.アサーティブ/アサーティブネスとは
自分のことも他人のことも大事にしながら、自己主張・自己表現をすることをアサーティブな表現、アサーティブなコミュニケーションといいます。勝ち負けのないWIN-WINの状態です。受動的でも攻撃的でもない態度で相手の話を聞き、自分の意見を伝えます。何か行動を起こす時の「できそうだ」という感覚(自己効力感といわれる)のことをアサーティブネスと呼ぶこともあります。この姿勢(態度)を身につけるために行うのが「アサーティブ・トレーニング」です。アサーティブ・トレーニングは自分自身の成長と変化のために行うもので、セラピーとは別物です。
アサーティブという概念が世に出始めた頃、「アサーティブ・コミュニケーションを学ぶと生意気になる/攻撃的になる」と考えられたことがありましたが、今では研究も進みそれは偏見であったと言われています。
2.アサーティブな行動とは
アサーティブな行動とは、自分や他者の欲求・感情・基本的人権を必要以上に抑制することなく、自己表現することをいいます。
たとえば、次のようなものです。
(1)誠実である
アサーティブ・コミュニケーションでは、相手にも自分にも誠実であることを求めます。この「自分」にも誠実であるということがとても大事です。自分の感情を押し殺さなくてもいいのです。嬉しい・楽しいはもちろんですが、ネガティブな種類の感情、悲しい・苦しい・つらい・怒っているといった感情をちゃんと認めることを自分に対して誠実であると定義しています。ただ、その感情を相手に伝えるかどうかは別の話です。更に伝えるとしても相手の立場を尊重した伝え方をしなければなりません。そこが難しいところです。感情に任せるのではなく、相手のことも大事にした伝え方・・・難しいですね。ですから、トレーニングが必要なのです。
(2)率直である
「相手が上司だから」「先輩だから」「お客さんだから」と立場やシチュエーションに過度な遠慮をせずストレートにものを言う、ととらえてもらったらいいでしょうか。おそらくアサーティブ・コミュニケーションが生意気だとか攻撃的だと受け止められたのは、あまりにも率直であることに関心が行き過ぎて、相手を尊重する表現が不十分だったのだと思います。ストレートにものを言う場合でも相手への礼儀正しさは必要ですし、そもそも相手の立場を思いやることを忘れてはアサーティブではなくなります。アサーティブ・コミュニケーションは生産的な職場環境をつくってくれますが、複数の要素を同時に満たさなければならないので、難しいものなのです。
(3)対等である
年齢の違いや役職やキャリアの違いで上下関係が生まれます。しかし、「人間としては対等」、これがアサーティブ・コミュニケーションの概念です。相手が上司だから、年長者だから、お客様だから、といった理由で卑屈になる必要はありません。もちろん上司も相手が部下だからといって、横柄・乱暴な態度をとっていいわけではありません。関係性にこだわることなく、互いに意見交換できる組織風土を上司が率先してつくる必要があります。
(4)自分のことに責任を持つ
アサーティブなコミュニケーションを取ろうとしても相手がいることですから、うまくいかないことも出てきます。その時に相手を攻撃する・責めるのではなく、自分にできることはないか?と考えるのです。「伝え方が9割」という考え方もありますが、アサーティブ・コミュニケーションにおいては話し手も聴き手も対等ですから、50%は自分の責任です。
3.非アサーティブな行動とは
では、次に非アサーティブな行動についてみていきましょう。
(1)受け身的行動
欲求・感情・基本的人権を後回しにして、相手を優先させます。
あなた任せ、自己犠牲、遠回し、ノーと言えないなどが該当します。
「私はできない」「私はそれをしてはいけない」「私はそれをすべきだ」「私はダメ人間だ」「むこうが正しい」「物事は私の望んでいるようには運ばない。もう最低だ。」といった言葉がよくでてきます。
次のような行動があげられます。
- 消極的
- 犠牲
- わびる
- 不平を言う
- 降参する
- あきらめる
- 脅す
- 妥協したくない
- 復讐する
(2)攻撃的行動
自分の欲求・感情・基本的人権を優先させ、相手を後回しにするパターン。
相手を支配しようとする・声を荒げる・話を聞こうとしない・無視する・間接的攻撃(悪口・陰口)罪悪感や不安(復讐されるかも)につながる
いわゆるハラスメントをする人の行動が該当します。
言葉や思考としては、「私は正しい」「向こうは私がやってほしいように行うべきだ」「私は全ての人々について、何がふさわしいか知っている」「私は素晴らしいが、相手はダメだ」「私はそんなに素晴らしい人間ではないかもしれない。しかし、他の人はもっと酷い。」といったものがあげられます。
行動は次のとおりです。
- 怒鳴る
- ののしる
- ものに八つ当たりする
- 脅す
- 妥協したくない
- 復讐する
4.アサーティブ・コミュニケーションを組織で実践するには
さて、ではアサーティブなコミュニケーションを組織で実践するには何をすればいいのでしょうか?
(1)現状認識
組織の中でどのようなコミュニケーションが行われているかを観察します。会議や報告・連絡・相談、対外的なやりとりといったフォーマルなものと上司yあ同僚との日常会話などのインフォーマルなものの両方を取り上げることが望ましいですが、一度にすべては難しいので領域を設定して小さく始めてもいいでしょう。問題となる言動はあるか?その言動はいつ・どんな時に起きているか?頻度は?何が原因・引き金となっているのか?などを観察・分析します。分析が終わったら、どの状況でのコミュニケーションをどのように改善するかを決めます。
(2)トレーニング
アサーティブなコミュニケーションができるようにトレーニングをします。外部の講師に依頼してもいいですし、今はいろんなノウハウが公開されています。書籍もたくさん出ていますので、社内で教科書を決めてみなで話し合いながら進めるのもおすすめです。あるいはリーダー格の方だけが外部で講習を受けてきて、学んだ内容をみなさんに伝えるという方法もあります。とにかく、アサーティブ・コミュニケーションは簡単なようでいざ実践しようとなるとなかなかできないものです。お手本や標準となるものを設定し、(1)で決定したコミュニケーションを改善することを念頭にチーム全員でトレーニングをします。
(3)計画と実践
どの場面でどのようにコミュニケーションを改善するかを具体的に設定します。できれば、全員が実践計画をつくるか共有します。改善ができた時には何が変わっているかまで明確に表現し、実践するための期間を設けます。
(4)フィードバック・修正
一定の期間を経て、実践できているかどうかを話し合います。できていなければ、何が難しいのかを話し合い、実践できる方法がほかにないかを考えます。
(5)定着
実践の期間が終わった後。アサーティブなコミュニケーションが定着しているかどうかを確認します。
定着していると判断したら、他の領域に着手するかどうかを考えます。
まとめ
- アサーティブ/アサーティブネスとは、自分のことも他人のことも大事にしながら、自己主張・自己表現をすることをいう。アサーティブな表現、アサーティブなコミュニケーションのこと。勝ち負けのないWIN-WINの状態。
- アサーティブな行動とは、自分や他者の欲求・感情・基本的人権を必要以上に抑制することなく、自己表現すること。
- アサーティブには、誠実・率直・対等・自己責任の4つの要素がある。
- 非アサーティブな非動には、受け身的行動と攻撃的行動の2つがある。
- アサーティブ・コミュニケーションを組織で実践するには、現状認識・トレーニング・計画と実践・フィードバック・定着といったプロセスが必要。
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